【判例あり】賃貸のハウスクリーニング代は拒否できるのか【詳しく解説します】

賃貸のハウスクリーニング代は拒否できるのか

賃貸契約において退去費用でのトラブルは少なくありません。

そして退去費用の中でも、

「ハウスクリーニング代は借主が払うものなの?」

「ハウスクリーニング代は拒否できる?」

このような疑問をお持ちなられている方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は賃貸不動産会社に勤め、宅地建物取引士でもある筆者が、

賃貸のハウスクリーニング代は拒否できるのか

について詳しく解説をしていきます。

実際の裁判事例も元に解説をしていきますので、この記事をお読みいただくことで賃貸のクリーニング代は拒否できるのかどうかしっかり理解することができますよ。

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賃貸のハウスクリーニング代は拒否できるのか

まず結論からお伝えしていきますと、

賃貸のハウスクリーニング代は拒否できるケースもあるがなかなか難しい

となります。

非常にあいまいな結論となってしまいますが、そもそもなぜ原則貸主(オーナー)負担であるハウスクリーニング代が借主(入居者)負担となってしまうのかというと、

「ハウスクリーニング代は借主負担」とする特約が基本的には認められているからです

そのため現状では多くの物件でハウスクリーニング特約が結ばれており、

ハウスクリーニング代=借主(入居者)負担

が一般的となっています。

ハウスクリーニング代を拒否できるケースとは

しかし、ハウスクリーニング代を借主負担とする特約は何でもかんでも有効となるわけではありません。

クリーニング費用の特約の有効性については、

クリーニング特約については

①賃借人が負担すべき内容・範囲が示されているか、

②本来賃借人負担とならない通常損耗分についても負担させるという趣旨及び負担することになる通常損耗の具体的範囲が明記されているか或いは口頭で説明されているか、

③費用として妥当か等の点から有効・無効が判断されます。

引用:国土交通省ガイドライン Q&A16

国土交通省のガイドラインでは上記のように示されています。

つまり上記の内容に反しているクリーニング特約の場合は、ハウスクリーニング代を拒否できるケースもあると言えます。

例えば、

  • クリーニング代の金額が明記されていない
  • 負担する具体的な内容が説明されていない
  • 金額が高すぎる

などが考えられます。

反対に、

  • 負担すべき内容・範囲がしっかり示されている
  • 本来借主負担とならない通常損耗分についても負担させるという趣旨及び負担することになる通常損耗の具体的範囲が明記されている
  • 相場からかけ離れていない金額設定

上記のような内容をしっかりクリアしているクリーニング特約に関してはクリーニング代を拒否することは難しいと言えるでしょう。

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賃貸のハウスクリーニング特約の判例

では実際にハウスクリーニング代を拒否できたケースはあるのか。

ここでは2つの裁判所の判例を元にさらに深堀りをしていきます。

クリーニング代を拒否できた判例

東京地方裁判所判決 平成 21 年 1 月 16 日

〔敷金 43 万 6000 円 返還 43 万 6000 円〕

参考:国土交通省ガイドライン 通常損耗補修特約は合意されたとはいえず、仮に通常損耗補修特約がなされていたとしても、消費者契約法 10 条に該当して無効とされた事例 

この裁判では貸主から借主へ請求された原状回復費用の合計48万3,000円の内容が消費者契約法10条に該当し、無効であるとして敷金全額が返還された裁判事例となっています。

請求された原状回復費用の内容は、

  • 障子・襖・網戸張替え
  • 畳表替え
  • ハウスクリーニング
  • 通常損耗及び経年劣化による壁、天井、カーペットの費用負担
  • 日焼けによる変化は負担割合表によることとし、障子・襖・網戸・畳等は消耗品であるため居住年数にかかわら
    ず張替え費用は全額賃借人の負担

上記は契約内容に含まれていました。

今回の焦点であるハウスクリーニング代も含まれていますね。

なぜ全額返還となったのか

全額返還となった理由は下記のとおりとなっています。

  • 原状回復についての本件賃貸借契約19条5号は、本件居宅に変更等を施さずに使用した場合に生じる通常損耗及び経年変化分についてまで、賃借人に原状回復義務を求め特約を定めたものと認めることはできないこと
  • 修繕についての本件賃貸借契約25条2項・借主負担修繕一覧表等によっても、賃借人において日常生活で生じた汚損及び破損や経年変化についての修繕費を負担することを契約条項によって具体的に認識することは困難であること
  • 原状回復に関する単価表もなく、畳等に係る費用負担を賃借人が明確に認識し、これを合意の内容としたことまでを認定することはできず、通常損耗補修特約が合意されているということはできないこと
  • 礼金2ヶ月の授受がありながら、居住8ヶ月で敷金全額を失うこととなることについて、客観的・合理的理由はないこと
  • 本件の通常損耗補修特約は賃借人に必要な情報が与えられず、自己に不利であることが認識されないままなされたものであること
  • 賃貸期間が約8か月で特段の債務不履行がない賃借人に一方的に酷な結果となっており、信義則に反し賃借人の利益を一方的に害していること

非常に多くの理由があり、かなり難しい内容となっています。

もう少し簡潔にまとめてみますと、

今回の契約内容では通常損耗と経年変化分について原状回復義務を求め特約を定めたものと認めることはできない

日常生活で生じた汚損及び破損や経年変化についての修繕費を負担することを具体的に認識することは困難

原状回復に関する単価表がない

畳等に係る費用負担を賃借人が明確に認識できない

礼金2ヶ月の授受がある

通常損耗補修特約は賃借人に必要な情報が与えられず、自己に不利であることが認識されていない

入居期間8ヶ月

賃借人に一方的に酷な結果、信義則に反し賃借人の利益を一方的に害している

となります。

さらに焦点としているハウスクリーニング代に絞って考えると、

  • クリーニング代の金額が明記されていない
  • 負担する具体的な内容が説明されていない
  • 特約内容が必要な情報が与えられず、借主に不利であることが認識されていない

など…クリーニング特約に反する契約内容であることが分かります。

それに加えて、

「礼金2ヶ月授受・入居期間8ヶ月・特段の債務不履行なし」

を踏まえれば原状回復費用48万3,000円はあまりに高額すぎると言えますし、入居者にとって非常に酷な請求内容と言えます。

敷金全額返還となって当然とも言える結果です。

ただ、この裁判事例は10年以上前のものであり、近年ではここまで酷い原状回復請求を行う不動産会社やオーナーが存在するとは考え難いです。

とはいえ、上記の内容を把握しておくと万が一不当な請求をされた時の参考になるかと思います。

クリーニング代を拒否できなかった判例

東京地方裁判所判決 平成21年9月18日
第一審・武蔵野簡易裁判所判決

(敷金 5 万 6000 円 返還 1 万 7750 円)

参考:国土交通省ガイドライン 清掃費用負担特約並びに鍵交換費用負担特約について消費者契約法に違反しないとされた事例 

この裁判では借主がハウスクリーニング代26,250円と鍵交換費用12,600円の返還を求めたものの、返還が認められなかった裁判例です。

借主の詳しい返還請求理由は、

  • 清掃費用負担特約と鍵交換費用負担特約の2つの特約は有効に成立していない
  • 成立していたとしても消費者契約法10条により無効である
  • 仮に無効でないとしても消費者契約法4条2項により取り消された

というものでした。

なぜ返還が認められなかったのか

①清掃費用負担特約について

  • 契約書等には賃借人が契約終了時にハウスクリーニング費用2万5000円(消費税別)を賃貸人に支払う旨の記載がいずれにも存在すること
  • 賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明書には費用負担の一般原則の説明の後に、「例外としての特約について」と題して、ハウスクリーニング費用として2万5000円(消費税別)を賃借人が支払うことが説明されていること
  • 仲介業者が口頭で説明したことは認められること
  • 金額も賃料月額5万6000円の半額以下であること
  • 特約は明確に合意されていること
  • 賃借人にとって退去時に通常の清掃を免れることができる面もあること
  • 本件貸室の専門業者による清掃費用として相応な範囲のものであること
  • 当該特約が賃借人の利益を一方的に害するとまで言うことはできないので、当該特約は消費者契約法10条違反であるとはいえないこと
  • 賃貸人の代理人である業者が賃貸住宅紛争防止条例に基づく説明の際に当該特約について「清掃費用は賃貸人が本来負担するものであるが、賃借人に負担をお願いするために特約として記載している」と説明したことが認められることから、消費者契約法 4条 2 項違反の行為もないこと

こちらも非常に多くの理由があり、かなり難しい内容となっていますね。

重要なポイントをまとめますと、

  • クリーニング代が明記されている
  • 金額も高額ではない
  • 本来は貸主負担であることが説明されている
  • 借主の利益を一方的に害する内容ではなく消費者契約法10条違反であるとはいえない
  • 消費者契約法 4条 2 項違反の行為もない

となります。

上記の内容は国土交通省ガイドラインのクリーニング特約の有効性、

  • 負担すべき内容・範囲がしっかり示されている
  • 本来借主負担とならない通常損耗分についても負担させるという趣旨及び負担することになる通常損耗の具体的範囲が明記されている
  • 相場からかけ離れていない金額設定

上記3点にしっかり適用されていると言えます。

また、鍵交換費用が返還されない理由については、

  • 宣伝用チラシ、重要事項説明書に記載されていること
  • 契約締結時に仲介業者が口頭で説明していること
  • 鍵交換費用を含めて契約金を支払っていることからすれば鍵交換費用を負担する旨の特約が明確に合意されているものということができ、要素の錯誤があったと認めるに足りる証拠もないこと
  • 鍵交換費用負担特約は特約そのものが明確に合意されていること
  • 鍵を交換することは前借主の鍵を利用した侵入の防止ができる防犯に資するものであること
  • 鍵交換費用の金額も1万2600円であって相応の範囲のものであること
  • 賃借人にとって一方的に不利益なものであるということはできないから当該特約は消費者契約法10条違反ではないこと
  • 鍵交換費用について、賃貸人が本件ガイドラインに沿った内容と説明したと認めるに足りる証拠もなく、消費者契約法4条2項違反でもないこと

上記の理由から鍵交換費用負担特約は有効であるものとして、返還が認められませんでした。

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賃貸のハウスクリーニング代は拒否できるケースもあるがなかなか難しい

上記ではクリーニング代が拒否できたケースと拒否できなかったケースを実際の裁判事例から解説してきました。

2つの裁判事例はともに10年以上前のものであり、この2つの裁判事例を参考として現在多くの不動産会社やオーナーは、

「クリーニング代を借主負担とする特約」

を設けています。

ですので、近年において借主が一方的に不利となる(裁判で認められないような)特約を結ぶ不動産会社やオーナーはかなり少なく、クリーニング代を拒否できるケースは決して多くないと言えます。

また、クリーニング特約の有効性についてもあいまいな部分が多く、

「特約が認められる・認められない」

判断が非常に難しいことも借主・貸主ともに頭を悩ませることに繋がっています。

ハウスクリーニング代は最低限支払う費用として割り切る

借主として「ハウスクリーニング代は最低限支払う費用として割り切る」ことがどうしてもできない方も中にはいらっしゃると思います。

しかし、2つ目の裁判事例でもありましたように、

ハウスクリーニングは賃借人にとって退去時に通常の清掃を免れることができる面もあります。

賃貸を退去する際には、

  • 新居の契約手続き
  • 新居の入居準備
  • 荷物の搬出

など…さまざまな手続きやすべきことが多くあります。

仮に退去の際に通常の清掃もしっかり行なわなければいけない場合を考えると、ハウスクリーニング代も全てが無駄な費用ではないと言えます。

今後もしかすると、ハウスクリーニング代を貸主負担とする賃貸契約が一般的となるかもしれませんが、まだしばらくはハウスクリーニング代は借主が最低限支払う費用として割り切る形が続きそうです。

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まとめ

今回は賃貸のハウスクリーニング代は拒否できるのかについて詳しく解説をいたしました。

ハウスクリーニング代については国土交通省ガイドラインにおいても非常にあいまいなものとなっており、判断が難しいものとなっています。

しかし、借主が一方的に不利にならず金額や負担範囲などが明確となっている特約に関しては、基本的にハウスクリーニング特約は認められるものです

反対に、

  • クリーニング代の金額が明記されていない
  • 負担する具体的な内容が説明されていない
  • 金額が高すぎる

など、ハウスクリーニング特約に適していない特約に関しては拒否できるケースもあると言えます。

このようなハウスクリーニング特約をはじめ、賃貸契約にはさまざまな難しい内容が多いですが、賃貸契約を結ぶ前に知識を付けておくことで不当な内容で契約を結ぶことも少なくなり、賃貸トラブルに巻き込まれる可能性もかなり少なくなると言えるでしょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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